1月16日にアメリカの大統領選挙が、アイオワ州での共和党党員集会で本格スタートしました。 個人的にはニッキー・ヘイリー元国連大使を応援していますが、アイオワ州の集会の結果、トランプ氏が勝利し、候補指名に一歩近づきました。
最近のアメリカ大統領選挙では、アメリカの分極化が際立っています。そこには自分の主張を通すため、相手の主張を認めないという、非寛容な社会になっているように思われます。今回は、アメリカのこの分極化について洞察してみたいと思います。
ご存じの通りアメリカは民族国家ではなく、移民国家です。人口は移民によりどんどん増えています。そのため、国家としての活力は維持されているように思われ、GDPの成長も成熟国家の中では大変高いレベルです。しかし、それとは裏腹にいろいろな社会課題について分極化が進んでおり、その対立がどんどん激しくなっているように感じます。トランプ氏が登場して以来、その分極化の火に油を注いだ感じで、2020年の大統領選挙結果でさえ否定し続けています。
トランプ氏の支持者は、彼のすべての主張に賛成しているわけではなく、トランプ氏が主張しているものに自分の主張するものが含まれており、かつ、彼の実行力により、支持をしているという感じです。
従来のアメリカ大統領選挙では、自分の主張と相手の主張の間を取った穏健な主張に収束して行くという流れがあったと言われています。そのため、民主、共和とも中道勢力の意見が主体になっていたと言われますが、最近は両極端の主張が最後まで戦い続け、選挙が終わった後も宥和できなくなってしまいました。
つまり昔は、自分の意見が通らなくても全体的な見地から我慢する風潮があり、寛容性がありましたが、現在のアメリカでは、何が何でも自分の主張を通すことで、相手の主張に対して寛容性がなくなりました。そのため、際立った分極化が進んでいるように思えます
この原因の一つに、民族構成の変質があると言われています。従来、多数派であった白人のプロテスタント教徒はその比率を下げておりマイノリティになりつつあると言われています。そのため、従来多数派が寛容であったために安定していたものが、多数派がマイノリティになり、すべてが少数派になり、相手に譲歩できる余裕がなくなってしまったと言われています。
これを解決し民意が安定するためには、新しい多数派の登場が必要となります。その多数派とは、民族の構成や宗教の規範にあまりとらわれない世代、つまりZ世代になるのではないかという仮説があります。この世代は、豊かに育った世代のため、合理的で差別意識がありません。この世代が、主流になっていくことによりアメリカの分極化が安定していくという仮説です。
この仮説の正否はわかりませんが、この分極化は、諸行無常でどんどん変化する世の中では、旧来の価値観や論理思考で問題を解決しようとしていることに原因があるように思います。変化する世の中で生まれる新たな問題は、おそらく旧来の価値観や論理思考では、解決できません。新しい価値観と論理思考が必要となってくるのでしょう。そして、Z世代はその新しい価値観と論理思考を感覚として持っているのかもしれません。
しかし、重要なことはすべての世代が、この新しい価値観と論理思考を理解する努力をしていくことです。そうすることで世の中の新しい問題の対応力が高まります。ただし、残念なことに、この新しい価値観と論理思考は、まだ、明確に言葉で表現できず、コンセンサスも取れていない状況です。そして、それこそが、まさに、米国、ヨーロッパ、日本など先進国が政治的に苦しみもがいている原因ではないかと思います。
今我々が取り組まねばならないことは、この新しい価値観と論理思考を明確にし、少なくとも先進国間でコンセンサスを取ることです。
コメントを残す